B'z シングル売上ランキング

 今回は、2025年現在で国内アーティスト首位の8000万枚超えの売上を持ち、50作連続1位という前人未踏の記録を打ち立て、現在でも邦楽界で第一線を張るB'zのシングル売上ランキングをお届けする。

シングル売上ランキング

 まずは、B'zのシングル売上ランキングを表にして示す。
(※画面幅が狭い場合、横にスクロールできます。)
 以上が計3611.8万枚の内訳である。四捨五入の影響等により、公式な値とは若干のズレが生じ得ることには留意いただきたい。

 表のままだと分かりにくいので、以下ではグラフ化して可視化してみる。


リリース順の売上推移

 まずは、リリース順の売上をグラフ化してみる。
 グラフを見ると、1990年にスマッシュヒットを連発しプチブレイクしたことが分かる。特に、4枚目の「BE THERE」は年間売上19.7万枚で1990年の年間60位にランクインし、当時のビーイングの稼ぎ頭であったTUBEの「あー夏休み」の23.6万枚(年間48位)に既に肉薄する勢いであった。さらに、その2週間後にリリースされた5枚目のシングル「太陽のKomachi Angel」では、TUBEがまだ獲得していなかった週間1位をあっさり獲得。TUBEの最大ヒットシングル「シーズン・イン・ザ・サン」の売上34.5万枚も超えてしまうなど、この年の2月の3rdシングルで初の100位圏内にランクインしてから半年も経たないうちにあっさりTUBEを抜いてしまったのである。
 結果的に、1990年は破竹の勢いでリリースを続け、年別のアーティスト売上でなんと年間3位に入った。

1990年のビーイングの快進撃についてはこちら↓ 3. ビーイングブーム徹底解析その2 ~ビーイングブーム前夜(90年)~


 翌91年に入っても破竹の勢いはとどまることを知らず、大ブレイクを果たす。8作目の「LADY NAVIGATION」で初のミリオンヒットを記録し、ここから13作連続のミリオンヒットを記録した。9作目「ALONE」やアルバム「RISKY」「MARS」も大ヒットし、91年はアーティストセールスで年間1位を獲得し、早くも邦楽の頂点に登り詰めた。

1991年のB'zの大ブレイク劇についてはこちら↓ 4. ビーイングブーム徹底解析その3 ~ビーイングブーム前夜(91年)~

B'zのシングルミリオン記録についてはこちら↓ 1. B'zシングル連続ミリオン記録


 1993年の12th「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」で最高売上を記録した後は、数年に1回、前後のシングルより売上が突出して高いシングル(「LOVE PHANTOM」「今夜月の見える丘に」「ultra soul」「OCEAN」「イチブトゼンブ/DIVE」)を世に輩出しながら、徐々に売上を下げていった。
 また、以前に解析したZARDと同様に、売上が安定して非常に高いのも、着実に固いファン層を獲得していた証しであろう。

 続いて最高売上を記録した12thシングル「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」以降の売上のプロットに対して指数関数を近似してみた。
 2003年のマキシシングル化の再販分を含むと他のアーティストとの比較の際に不公平なので、再販分は含んでいないことに注意されたい。近似曲線は、y=178.732*exp(-0.061*x)という式になった。指数の肩が、ZARDの場合は-0.097だったが、B'zでは-0.061となっているので、B'zの方が人気の継続度合いが高かったと言える。
 やはり、21stシングルの「FIREBALL」は、実力的には100~110万枚の売上を見込めたにもかかわらず、75万枚にとどまっており、実力の3/4程度しか売れなかったことが分かる。一方で、27枚目シングルの「今夜月の見える丘に」は、実力的には72万枚程度のアーティストパワーにも関わらず、ドラマの大ヒットで50万枚も上澄みでき、実力の1.5倍以上の売れ方をしたことが読み取れる。


初動売上・最高位の推移

 次に初動売上と週間チャートの最高順位の推移をグラフ化してみよう。
 初動売上(青線)は、第1段階として、3rdシングル「LADY-GO-ROUND」から6thシングル「Easy Come, Easy Go!」にかけて3万枚/作ずつ直線的に増加した後、第2段階として、7thシングル「愛しい人よ Good Night...」から、13thシングル「裸足の女神」まで、平均して11.5万枚/作のスピードで直線的に増加していった。特に、傾きが急な8th「LADY NAVIGATION」~10th「BLOWIN'」は20万枚/作の凄まじいペースで増えていった。91~92年前半は、週間1位の売上枚数が8万枚程度の週も多く、運悪く強力なメガヒット曲にぶち当たらない限り、15万枚を超えればほぼ1位を獲得できるレベルであった。そんな中で、初動売上が20万枚ずつ増えるというのは異常中の異常である。このグラフだけでも彼らの特異さが際立つものである。
 初動売上が安定して70万枚を超えるのは、いくらCDの売れた90年代と言えどもB'zくらいである。17thシングル「love me, I love you」で初動が45万枚に落ち込んでいるのは、発売日の関係であり、発売日から7日間で計算すれば実質的には初動60万枚を超えるはずである。初動が70万枚もあると、2週目、遅くとも3週目までにミリオンを確実に突破する。初動の大きさがものをいうだけに、この初動売上を叩き出せるのは本当にすごい。

 一方で、週間チャートの最高位(赤線)は、よく知られているように、5thシングル「太陽のKomachi Angel」で初の初登場首位を獲得して以来、2023年リリースの最新シングル「STARS」まで50作連続で1位を獲得している。

 次に、初動売上比率を出してみる。

 全体的な傾向として徐々に初動売上比率(青線)が高くなっていることが読み取れる。前後のシングルに比べて売上が大きい、すなわち、赤棒グラフが飛び出しているシングルは5作あるが、「LOVE PHANTOM」と「今夜月の見える丘に」はそれぞれ初動売上比率が51.1%, 59.5%とブレイク後の平均的な値(50~60%)の範囲に収まっている上、前後のシングルとあまり差がない一方で、「ultra soul」「OCEAN」「イチブトゼンブ」の3作は、青の折れ線グラフが明らかに下がっており、前後のシングルの初動売上比率に比べて15%以上低下している。「今夜月の見える丘に」は発売日を遅らせた影響もある可能性があるので何とも言えないが、少なくとも後者は固定ファン以外の一般的なリスナーがシングル購入までに至った結果と見ることができる。特に「イチブトゼンブ/DIVE」は、1995年以来、実に14年ぶりに初動売上比率が50%を下回ったシングルとなった。


タイアップ別の売上

 タイアップ別の売上について分析しよう。
 上の円グラフが比率とタイアップごとの売上枚数を示しており、下の棒グラフがその内訳を示している。
 タイアップ別の売上枚数は、全盛期を90年代に迎えただけあってドラマとCMがおよそ1/3ずつを占めた。若年層はB'zといえば名探偵コナンのイメージが強いのかもしれないが、作品数としてはたかだか4作で売上としても7.1%にとどまる。これはノンタイアップと同程度の値である。
 ドラマ主題歌のミリオンは8作と実に多い。21世紀に入ってからも、ミリオンには到達せずとも、ドラマ主題歌ではしっかりヒットを飛ばしている。CMは90年代の曲はかなり売れているが、00年代以降の作品数が相対的に多く、棒グラフの上部が細切れになってしまっている。ZARDとは異なり、ノンタイアップの作品も一定数存在する。
 タイアップごとの1作あたりの売上枚数も計算してみると、ドラマが最も高い93.4万枚というとんでもない値を記録している。CMとアニメの1作あたりの売上がそれほど変わらないのは意外である。CMソングは00年代以降の作品が相対的に多いことと、アニメタイアップのサンプル数が少ないことが影響したか。



初登場首位が危ぶまれた日

 先述のように、50作連続で初登場首位を獲得し続けているB'z。しかし、実は彼らにも幾度も首位陥落の危機があったのだ。

 ちなみに、初の首位は、1990/06/25付の週間ランキングで、以下の通りであった。
 1990年はまだCDバブル前夜であり、初動5万枚でも首位を獲得できるくらいのレベル感であった。

 では、ここからは本題の首位陥落の危機を挙げていく。

首位陥落の危機~その1「Real Thing Shakes」~

 わりと危なかった例の1つ目が、1996/05/27付の週間チャートである。  96年の年間3位(183.9万枚)に輝いた超メガヒット曲、久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」とリリースがかぶった結果、約8万枚差の薄氷の勝利であった。もちろんB'zも初動60万枚なので累計売上はミリオンオーバーである。
 3位が11.8万枚なので、極端な話、11.9万枚であっても2位になれるのだが、52.8万枚も売って2位というのはかわいそうな話である。当たり前の話であるが、50万枚越えで週間2位は1996年の年間最高記録である。さすがに1996年とはいえ、どんなにレベルの高い週であっても、およそ35万枚という週しかなかった。まあ35万枚で2位も十分高すぎるのだが…。
 その35万枚で2位という例は、96年だけで3週あった。

1996/01/22付
  1. マイフレンド ZARD 36.3万枚 (初登場)
  2. DEPARTURES globe 35.6万枚 (2週目)
1996/03/18付
  1. ミエナイチカラ / MOVE B'z 71.6万枚 (初登場)
  2. I'm proud     華原朋美 35.4万枚 (初登場)
1996/04/22付
  1. 花 -Memento-Mori- Mr.Children 63.4万枚 (初登場)
  2. チェリー        スピッツ 35.2万枚 (初登場)
 B'zやMr.Childrenが圧倒的な初動パワーでその他のアーティストを力でねじ伏せていたことが明確になる結果となった。ZARDとglobeはほんの僅差でZARDが首位を獲得している。いやしかし、ここに挙がっている曲全てが当たり前のようにミリオン達成しているというハイレベルさには脱帽するほかない。


首位陥落の危機~その2「HOME」~

 首位陥落危機の2つ目が、1998/07/20付の週間チャートである。この週がB'zにとっては一番ヤバかった事例である。  98年の1月にリリースしたシングル「winter fall」が初の週間チャート首位を獲得、2月にリリースしたオリジナルアルバム「HEART」がわずか4週でミリオン到達とノリに乗っていたL'Arc~en~Cielが、GLAYの2作同時リリースに対抗して、シングル3作同時リリースを行った。それに、B'zの25thシングル「HOME」のリリース日がちょうど重なり、ドンパチ正面激突することになったのである。
 当時の状況を明石昌夫がYouTubeで振り返っている。
 およそ1.5万枚差の本当に薄氷の勝利だった。当時のL'Arc~en~Cielは飛ぶ鳥を落とす勢いであった、かつ、B'zも連続ミリオン記録が切れるなどアーティストパワーが落ちてきていたタイミングであったため、B'zが初登場4位になってもおかしくなかったが、ここでなんとか持ちこたえたという事実は、直前に発売されたベスト盤「B'z The Best "Pleasure"」が当時のアルバム売上の日本記録を超えるメガヒットを記録したという事実とともに、B'zの売上の底堅さを物語っている。

B'zのベスト盤リリースの経緯についてはこちら↓ 2. B'zにとって最大の問題作!?Flash Back -B'z Early Special Titles-



首位陥落の危機~その3「今夜月の見える丘に」~

 3つ目が、2000/02/21付の週間チャートである。次の表を見てみると、パット見余裕で首位を獲ったように見える…。
 というのも、なんとB'zが発売日をズラして首位を守りにいったからである。当初は2週間前にリリース予定だったのだが、”「未来日記」テーマソングとして前評判の高かったサザンの「TSUNAMI」”と”「LOVEマシーン」の大ヒットで勢いに乗るモーニング娘。の新曲「恋のダンスサイト」”が同週にリリースされることが判明し、あえてB'zサイドが直接的な勝負を避けたのだ。
 発売日を遅らせているため、主題歌であるドラマ「ビューティフル・ライフ」の注目度の上昇に伴って、当初の想定より初動売上は増えている可能性が高いが、仮に、B'zの初動売上が67.2万枚のままであると仮定して、2週前の2000/02/07付の週間ランキングを作ってみよう。  ※赤色が初登場、青色は前週で既出

 なんと1位から3位までが初動60万枚越えという衝撃の週間ランキングが誕生するのである!この週はとにかくレベルが高く、実際の順位でも初動40万枚で3位、小室ファミリー最後のヒットシンガー鈴木あみの初動27.3万枚ですら5位である。初動27.3万枚であれば週が違えば1位が取れても十分におかしくない数字である。「NEO UNIVERSE/finale」も2週目ながら25.0万枚も売り上げているにも関わらず、6位まで落ちてしまっている。前週はMr.Childrenの「口笛」が9.6万枚(2週目)で3位にランクインしていることを考えると、わざわざ発売日をこんな激戦週に持ってこんでもええのに…と思ってしまう。

 B'zサイドとしては発売日をズラすことで無難に首位を獲得した上に、超メガヒットした「TSUNAMI」の連続1位週数を減らすという妨害まで行ったわけであるから、これには批判もあることだろう。決して褒められたことではないかもしれないが、ビーイングに限らず、avexも記録のために発売日をいじるくらいのことはよくやっていたし、音楽市場におけるレコード会社同士の駆け引きと競争の範疇なので、まあしょうがないかなと個人的には思う。





 というわけで、ZARDBに続いて、B'zのシングル売上ランキングをお届けした。やっぱりB'zは売れているだけあって、話すネタが多いですね。このシリーズは今後も色んなアーティストでやっていきます。


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